2014年05月06日

渡辺淳一「愛の流刑地」感想

※2006年01月31日の日記を再掲。

渡辺淳一さんのご冥福をお祈りしますーー

 

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日経新聞の朝刊小説、渡辺淳一氏の「愛の流刑地」が今日で完結した。

とても読みやすい文体で、毎朝、楽しく読めた。
渡辺淳一氏の作品は日経新聞で連載されたことがこれまでにも85年の「化身」、96年の「失楽園」と二回あり、
そのどちらも私は新聞で読んだ。

「化身」は私がまだ19歳の時。
濃厚に色っぽい描写のシーンが延々と続き、朝の食卓で朝刊を広げ、読みたいけれども大っぴらに読むのもためらわれ、とっても困った。

「失楽園」は、これもまた濃厚なシーンが多く、ラストの衝撃的な心中が印象的だった。

「失楽園」と同じく、「愛の流刑地」も愛の極みとして“愛される最中の死”を打ち出している。

だが、今回は心中ではなく、女性だけが死んだ。

序盤、小説家と人妻が巡り合い、惹かれあっていく様子が丁寧に描かれる。
関係は不倫で、交際の支障となる事柄が多いにも関わらず、
大変スムーズに関係が進む。

通常、不倫を題材にした話なら、いかに困難を乗り越えて関係を維持していくかが焦点となるが、この小説中では、そこは大した問題にならない。
上手く行き過ぎるくらい、上手く事が運ぶ。

さて、では、何が問題になるのだろう?と思い始めた頃、
ヒロイン冬香の生活背景が小出しにされ、明らかになってくる。
夫を毛嫌いしている様子も描かれる。

不倫とは言え、他に好きな人ができたら、たとえ夫であろうと好きな人以外に抱かれるのは誰でも嫌だろう。
しかし、冬香の態度は極端であり、また夫の側にも異常な点が見れた。
夫婦仲は絶望的に悪いのだ。

そんな中、冬香は首を絞められることに喜びを感じ始める。
死にたがる。

戯れに、ではなく、本気で願っているようだ。
絶頂時に死ねたら、どんなに幸せだろう、という気持ちはわかる。
わかるけど、私は本当には死ねない。
でも、八方塞だった冬香は本当に死を願った。

そして、戯れのはずが、本当に窒息し、死んでしまった。

ここからがこの小説の本題。

主人公は逮捕され、裁判を受ける。
そして実刑8年を言い渡される。

小説を書くには取材をされているだろうから、
ある程度、本当にこのくらいの刑になるのかもしれない。

だけど、裁判シーンは読んでいて、なんとなく歯がゆかった。
主人公が弁護士にどこまでを話しているのかがわかりづらい。

読者はこれまでのいきさつを神の視点で読んで知っているから、
冬香の夫の卑劣な行為を暴露したら一気に有利になるんじゃないか?なぜ言い返さない?と気を揉んだり、
(腹に収めたのが主人公の人間性なのかもしれない)

証拠の録音テープを聞いて、尚、殺人と断定するのには無理がありすぎるんじゃないか?とか、

非常に受身になっている主人公にイライラした。

しかし、現実に自分が彼の立場なら・・・・
逮捕、尋問、拘置・・・と普通でない環境の中で冷静さを保てる自信はない。
犯すつもりでない罪ならば、尚更、呆然として受身になってしまうのは仕方ないのかもしれない・・・。

ラスト、息子さんに励まされて控訴するのかと思ったが、せずに終わった。
するべきじゃないかなぁ・・・と私は思うのだが。

冬香さんを想ってずっと暮らすのは、刑務所の中でなくても、どこにいても死ぬまで一緒だろう。

実刑8年でも、彼はたぶん模範囚だろうから、早めに出てこれるかもしれない。
その後、また小説を書くだろうか?
事の次第の真実を記した物語を。
もしかしたら、「愛の流刑地」こそが、それなのかもしれない。

posted by める at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月31日

「ファミレス」(重松清) 完結

日経新聞夕刊連載の小説「ファミレス」が完結した。

 

連載が始まって間もなくは

「ファミレス」(重松清)小手先料理、作ってみた で以前、日記に書いたように

話の行方が見えず、面白いのかどうなのか…という印象だった。

名前+呼び名で男性三人が登場するので、区別がつけにくい。

また、エリカ先生がとても非常識で厚かましいキャラなのにも閉口した。

 

しかし、時々出てくる料理のレシピは、とっても簡単で実用的。

実際に作ってみて、おいしかった。

 

序盤、ファミレスは、ファミリーがレス…の意味として、

家族の崩壊、分散が描かれた。

 

登場人物達は50才くらい。

私より少しだけ上の世代だ。

元々4人家族だったが、子どもたちは成長し、それぞれ就職や進学で家を出ていってしまった。

残されたのは夫婦二人。

これといった会話もない。

そんな中、夫は本棚の本に挟んである妻の捺印済みの離婚届を見つけてしまうーーー

 

私は離婚まで考えたことはない。

娘たちも家に同居しているのだが、バイトや遊びで出ていることが多く、

ここ最近、土日の夕食も夫婦二人だけで食べることが増えてきている。

 

数年前までなら、休みの日に外出するのも家族そろってが当たり前だったし、

それこそファミレスで外食することもたびたびあった。

 

子どもが20才前後になった今、もはや余程の機会でないと

一緒に出掛けてもくれないし、

家族そろって外食するにもお互いの日程を調整するのが大変…。

 

自然、主人と二人で出かけることが多くなる。

夕食も二人で外食することが増えた。

 

子どもが小さかった時には憧れた。

こんなふうに夫婦二人でゆっくり過ごせることを。

 

しかし…

子どもってのは、いるとうるさいけど、いないと淋しいものだ。

その喪失感をようやく乗り越え、

これからは二人で暮らしていくんだなぁ…と意識し始めた矢先に

この「ファミレス」が始まったものだから、小説の話の行方が気になって

毎日、読み続けた。

 

中盤、

あらら・・・本当に離婚しちゃうのかしら・・・と思ったが、

グ〜〜〜ッと大きく舵を切り、ゆっくりと話は転換していった。

家族の想い出は食卓にある。

これは誰々の好物、

誰々は、これが…といろんなご馳走の鉢を

震災被災者のおばあさんがテーブルにたくさん並べるシーンは

読んでいて、なんだか涙が出てきた。

 

伊丹十三監督の映画「タンポポ」で

死ぬ間際の奥さんに、ご主人が

「飯を作れ!」と言う。

すると、いまわの際だったはずの妻はフラフラと立ち上がり、

台所へ行って無意識のようにチャーハンを作る。作って、こと切れる。

それを泣きながら夫は食べる。

泣いている子どもたちにも「カーチャンが最期に作ったチャーハンだ。お前たちも食べろ!」と言うのだ。

 

まだ、子どもがいなかった20代に初めて見た時、

なんて乱暴な夫だろうとビックリして呆れた。

 

しかし、今ならそのシーンの深みが痛いほどわかる。

死にかけていても、「家族にごはんを作らなければ!」と思えば、私も立ち上がると思う。

ずっと10年20年、家族のために毎日そうしてきたのだから。

 

作り続けてきたご馳走・・・ご馳走と言うのもおおげさな「おかず」は

そのまま、その家族の歴史になるーーー

「ファミレス」を読んで、そうだよなぁ…と思うところは多かった。

 

常識外れのエリカ先生は、常識人である男性三人を混乱させながら

なかなかいい位置に居座り、見事に話の要となってまとめていく。

最後には、ひなたちゃんのファミリーが形となり、絆を感じさせてくれて

すっきりとした読後感が味わえた。

 

先日、最終回を迎えたドラマ「最高の離婚」も

紆余曲折を経て、夫婦お互いの本音を曝け出し合い、

それでも尚、離れがたいことを痛感してーー改めて、一皮むけた夫婦になった。

 

一昔以上前のドラマなら、

互いの自由を選び、女性は独立し、男を捨てるーーという強さが描かれただろう。

でも、自分の自由や言い分ばかりを優先していたら、

「誰も幸せになれない」と、「最高の離婚」では主人公が叫ぶ。

 

1980年頃から言われ始めた「個」の時代は極みまで到達してしまって、

ようやくターニングポイントを迎えたようだ。

「個」では幸せにはなれない。

笑顔になれない。

おいしいご飯を食べて「おいしい顔」になるのは、

一緒に食卓を囲む大切な人がいてこそ。

 

「ファミレス」は、とてもいいテーマで書かれていたと思う。

日経を読む中高年に今、気づくべき大切なことを

そっと教えてくれた気がする。

posted by める at 02:48| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月07日

「ファミレス」(重松清)小手先料理、作ってみた

日経新聞、夕刊で連載中の重松清の「ファミレス」に載っていた

“小手先”料理を作ってみた。

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「豆腐のチーズグラタンもどき」

お豆腐に中華スープの素をパラパラとふりかけ、とろけるスライスチーズを乗せて

レンジで1分半。

黒こしょうをふりかけ、オリーブオイルをかける。

あれば、おつまみの小魚チップス&ピーナツもトッピング。

・・・と小説には書かれているが、おつまみは我が家になかったため、

しらす干しをオリーブオイルで少し熱してみた。

彩りに、かいわれも、ね。さすがに。

 

「ファミレス」というタイトルは、

ファミリーがレス・・・つまり、欠如と言うか、喪失と言うか、

そういう意味合いなんだなぁ、というところまでは何となくわかってきたものの

まだ連載が始まって間もないため、どういう話かは掴めない。

 

お料理教室のエリカ先生が、どうにもとんでもない人のようで

正直、面白いと思えるか、ついていけないと思うかギリギリの感じ。

娘たちがよく使う若者言葉で言うと「マジキチ」キャラなのだ。

しかし、ここからドラマが展開していくようだし、

どうなるのか、もう少し見てみたい気持ちにさせられているのも確か。

 

さて、この「豆腐のチーズグラタンもどき」

お味の方はと言うと・・・・これが結構、そこそこおいしかった。

試してみてよかった、と思うほど。

とっても手軽に、手早く、残り物で作れる。

また、お豆腐の食べ方に悩んだ時に、作ってみようかな〜

posted by める at 00:29| Comment(10) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月24日

小池真理子「無花果の森」完結

日経新聞夕刊の連載小説「無花果の森」(小池真理子)が完結した。

 

失踪(逃亡)生活の様子を綴った物語。

全体に非常に陰鬱で暗く、地味〜〜〜〜〜な

ほんとに地味〜〜〜〜〜〜〜さを強調したようなね、

そういう描写が大変多い。

 

季節は、雨が降り止まない湿気過多な梅雨。

主人公の女性は、化粧っ気もなく、薄幸そうな顔立ち・・・・。

舞台となる岐阜県大崖(大垣市がモデルらしい)の町は

そんなに過疎っているのか??と思うほど、駅前にも人影のない淋しさ・・・

 

しかし、登場人物たちは本来はとても華やかなはずの設定なのだ。

女主人公は有名映画監督の妻だし、

有名画家の老女、

週刊雑誌の記者、

そして、大柄のオカマ。

 

いくらでも、もっと華やかな物語になりそうな面々が揃っているはずなのに、

彼らは皆、世間から隔絶され、閉ざされた巣のような場所で、

ひっそりと息をして日々を暮らしている。

 

「死」を絶えずそばに感じながらも、絶望だけは避け、

とにかく「生きる」試みに必死な主人公・・・・・

 

その描写は、やはり非常に平坦で殺風景で、暗い。

出口のない話・・・・。

閉塞感。

 

一体、この話はどう終結するのだろう?と何度か思った。

そういう「先の見えない気分」を登場人物たちと共有しながら読み進める。

 

これだけだと、なんだかとてもつまらない小説のようだ。

ところが、どっこい!

こんなに地味な話で、行動範囲も非常に狭い話なのだが、

老画家とオカマの毒舌、毒舌に隠された人情味がビシビシと物語を引っ張っていく。

 

それと・・・・

主人公・泉と鉄治がね、

これはもう二人は恋仲になるんでしょう、と

かーなり早い段階で察しがつくのに、なかなか結ばれずにね、

引っ張るんですよ〜〜〜〜〜〜

それで私は読まされましたわ、この小説!

 

鉄治も、これがまたいい男でね、

男の香りプンプンで。

オカマに惚れられるくらいのいい男なわけです。

 

梅雨が明け、

重い閉塞感が、今度は夏の太陽の容赦ない照りつけに変わり、

クーラーの風の黴臭さ、外気の重さ、壊れかけた室外機の騒音に逼塞し生活しながらも

徐々に少しずつ、人間らしい活動が増えてきて

鉄治と愛し合い、自分の体に温かい血が通うのを久しぶりに感じたりしながら

本当に少しずつ、失われた「当たり前にあるはずの安心感」を取り戻していく。

 

ゆっくり進んできた物語はラスト、急速にハンドルが切られ展開していく。

しかし、ラストがいいと、やっぱ話全体が「よかったな〜」って印象になるよね!

すごくドラマティックで素敵なラストシーンで、

本当に最後に綺麗なリボンをかけられて締めくくられて

読後感がよかったわ・・・・・。

 

この話、映画になるんじゃないかなぁ・・・という気がする。

映画になったら、良さそうなのよね。

鉄治、いい男だし!

どの俳優さんがいいかなぁ・・・なんてキャスティングを考えるのも楽しいですよ!

posted by める at 15:18| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月28日

「ちょんまげぷりん」荒木源

「読みやすくて面白いですよ」とO先生からお借りして

「ちょんまげぷりん」(荒木源)を読んだ。

 

なんとインパクトのあるタイトル!

映画(映画「ちょんまげぷりん」公式サイト)が公開されていることも知っていたし、

文庫本のカバーイラストが上條淳士さんのカッコイイ絵ということも知っていた。

(いやぁ〜、上條さんの絵はやっぱセクシーだ〜!)

 

映画の紹介で、「お侍さんがプリンを作る話」というあらすじも知っていたけれど

なんで、侍がプリン??と気になっていたので、さっそく読んでみた。

 

すると、本当になかなか読みやすい小説で、楽しかった。

子ども(幼児)を持つ母親(働くシングルマザー)の日々の苦悩、

仕事をしつつ、家事・子育てすることの厳しい現実が、とても細やかにリアリティーをもって描かれている。

実際に、幼児と接し、家事をした経験がなければ、なかなかわからない部分がきっちりと書かれているので

作者は男性なのに、ものすごくよく観察しているなぁ・・・・

ある期間、実際に家事を経験してみたのかしら?と感じたが、

映画サイトの作者コメントに、「退職後、主夫をしていた」とあって納得!

 

タイムスリップの話というのは、いろいろあるが、

気になるのは、やはり最後の締め方だ。

荒唐無稽な設定を可能にするタイムスリップだけに、

それを、いかにまとめるかが鍵。

「ちょんまげぷりん」も話の後半、意外な展開を見せ、

一体どこに話が着地するんだろう?と思ったが、

なかなか素敵な、ジーンとくる、読後感のいいラストで、

この小説全体が、とても良く感じられた。

 

江戸時代のお侍さんが現在の世界に、いきなりやってきたらーーー

それはビックリするだろうね。

車や電車、家電にも心底、驚くだろう。

それでも人間と言うのは案外、順応能力が高く、

結構、慣れてしまえるもの。

 

江戸時代の人が当たり前に持っていた「礼節」の心が

現代では、ずいぶん軽んじられている。

毎日の忙しさに皆が、手を抜いている。

大事なものを大事にできていない・・・・。

そのことを侍が気付かせてくれる。

 

確かにこの話は映画にすると面白そうだ。

主役が錦戸くんというのも、いい。

彼は本当に侍っぽいもの。

 

しかし、原作では安兵衛はイケメンとして描かれておらず、

むしろ外見は武骨な感じの、若さを感じさせない20代になっている。

だからか・・・・・ラブシーンらしいシーンもないのよねぇ・・・・

安兵衛がイケメンなら・・・・・もうちょっと話も変わっているんじゃないかって気もする。

 

映画、観に行こうかと思ったら、なんと!明日で大阪は終了らしい。。。

しかも上映は午前中のみ、、、、

うううーん、残念〜

きっと、いつかテレビでやると思うので、その時には絶対観たいな!

posted by める at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする