2018年07月05日

「つみびと」山田詠美

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日経新聞夕刊に掲載中の小説「つみびと」山田詠美。
育児放棄した母親が幼い子どもたちを施錠したマンションの一室に留守番させたまま帰らず、熱中症で幼子二人が亡くなった事件。
…実際にこのニュースが驚きや怒りと共に報じられたのをはっきりと覚えている。
誰もが非難した。
なんてひどい母親だ、と。

また、そんなことになる前にもっとどうにかならなかったのか?
誰も手を差し伸べなかったのか?どこにも助けを求めることができなかったのか?
公的機関へ相談するなどの手段を知らなかったのだろうか?と母親の愚かさに溜息をつく。

起きてしまったことはとても重大で、どう弁解しても到底、許されない。
だけど、そうなる前の生活や日々の暮らし、人生があった。
一体、どうしてそんなことになってしまったのか。
そのことをとても丁寧にひとつひとつゆっくりと描く作品。

事件を起こした“蓮音”、その母の“琴音”、それぞれの幼少期や思春期の話、また事件後の話などがランダムに綴られる。
そのため、全体像が立体的に浮かび上がってくる。
…のだが、夕刊の連載小説のためページを遡って読み返すことができず、時々、あれ?これは“蓮音”と“琴音”どっちの過去だっけ?と記憶が混乱する。
二人とも幼少期に親から虐待を受けているのだ。
似ている。
似ているが、当然ながら生き方はそれぞれ異なっていく。

蓮音は「ひどい母親」だったのか?
結果的には、取り返しのつかないひどいことをしたのだが、
日々の生活の中には笑いもあり、幸せもあったことが描かれる。
そうして同時にべったりと張り付くような絶望が絶えずすぐそばにあることも。

時折、あまりの救いのなさに読むのがつらくなるような回もある。
しかし、夕刊をポストから取って来て毎日最初に読む。

挿絵は横尾忠則さん。
一瞬、本文の内容と関係がなさそうな絵に思う時もあるのだけど、もう一回見直すと、なんとなくわかる気がしてくる。
いろんな手法で描かれた絵で毎回、ちょっと驚く。

話の結末というか、事件の出来事は既に提示され、わかっている。
この先、どういうふうに話が広がり、結んでいくのか…
毎日楽しみな連載小説は久しぶりで嬉しい。
posted by める at 20:52| Comment(0) | | 更新情報をチェックする
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